アセトアミノフェンは「熱」や「痛み」を抑えるお薬です
アセトアミノフェンは、1873年に初めて合成され、1893年に医薬品として使用されて以来、100年以上にわたって世界中で広く用いられている、長い歴史をもった解熱鎮痛薬です*1。
アセトアミノフェンは主に脳にある「体温調節中枢」に作用し、血管や汗腺を広げることで体外へ熱を逃し、熱を下げる働きをします。
また、脳の中の発熱や痛みの情報を伝える物質を抑える作用があることから、頭痛や生理痛、関節痛などさまざまな痛みを和らげる働きをもっています。
つまりアセトアミノフェンは、「解熱」と「鎮痛」という2つの効果を併せもつ成分といえます。
お子さんや妊娠中・授乳中でも使用することができます
医療現場において、アセトアミノフェンは、大人や高齢者はもちろん、小さなお子さんから妊婦さん、授乳中の女性にも使われている成分です。医療用として医師の判断の元で用いられる場合には、0歳から使用が可能です*2。市販薬(一般用医薬品)においても、子ども用の風邪薬などに解熱薬として配合されている成分の多くはアセトアミノフェンです。
妊娠中や授乳中には、服用するお薬について特に気になる方も多いと思いますが、日本産科婦人科学会においても、妊娠中に解熱鎮痛薬を使用する場合には「アセトアミノフェンが勧められる」としています*3。
また、厚生労働省事業として設置されている「妊娠と薬情報センター」では、「授乳中に安全に使用できると考えられる薬」の1つとして、アセトアミノフェンが挙げられています*4。
このようにアセトアミノフェンは、年齢や性別にかかわらず、幅広く使用されている解熱鎮痛薬です。
注意:一般用医薬品を服用する場合は、各製品の添付文書を必ずお読みください。妊婦または妊娠していると思われる方、および高齢者の方は、服用前に医師、歯科医師、薬剤師または登録販売者に相談してください。製品によっては成人(15歳以上の方)向けの用法・用量となっており、お子さんに用いることはできないものがあります。
インフルエンザの際の解熱にも広く使用されています
医療現場において、アセトアミノフェンは、インフルエンザの際の解熱手段としても広く使われています。
その理由は、これまでの研究から、アセトアミノフェンがインフルエンザ脳症(インフルエンザウイルスの感染に伴って起こるおそれがある重篤な脳の病気)の発症リスクや、死亡のリスクを高めることなく使用できることが明らかにされている解熱鎮痛薬であるためです*5, 6,。
アセトアミノフェンは、インフルエンザと診断されたり、その疑いがあるときに用いる解熱鎮痛薬としても適した成分といえます*6。
胃にやさしく、眠気を催すことのない成分です
アセトアミノフェンは、主に脳にある「体温調節中枢」に作用するお薬であり、胃の粘膜を保護する物質であるプロスタグランジンの分泌を妨げないため、胃腸への影響が少ないことも特徴の一つです。また、眠気を催すことのない成分です。
より安全に使うために、次のことに気をつけましょう
アセトアミノフェンを使用する際には、特に次のことに気をつけてください。
- 服用中、服用の前後は飲酒を避けてくださいアセトアミノフェンは肝臓で代謝されるお薬であるため、お酒との相性がよくありません。アルコールとの併用は肝臓に負担となり、肝機能に影響を及ぼすことがあるため、服用中および服用前後の飲酒は避けましょう。普段から酒量の多い方は特に注意してください。
- ほかの解熱鎮痛薬や風邪薬と併用しないでください市販の解熱鎮痛薬や風邪薬には、アセトアミノフェンを配合したものが多くあります。たとえば痛み止めとしてアセトアミノフェンを服用していて、風邪気味だからと別の風邪薬を併用してしまうと、知らず知らずのうちに、アセトアミノフェンの過量服用になってしまうことがあり、肝機能障害などの副作用が出やすくなってしまうおそれがあります。
- 長期間の使用(連用)は避けてください解熱鎮痛薬は、熱や痛みの原因を治療するお薬ではなく、あくまで症状を緩和するお薬です。自己判断で長期間使い続けたり、説明書(添付文書)にある用法・用量を超えて使用したりせず、症状が長引く場合には必ず医療機関を受診し、医師に相談するようにしてください。
発熱や痛みの予防に使うことはお勧めできません
なんとなく熱が出そうなときや、頭痛が始まりそうなときに、それらの予防を目的として解熱鎮痛薬を用いることはお勧めできません。
- 解熱薬の主な役割は、熱による不快な症状を和らげること発熱は、体がウイルスや細菌などの病原体と戦うときに起こる正常な生体防御反応です。しかし一方で、発熱に伴って起こるだるさや寝苦しさなどの症状が体の負担になる場合もあります。こうした際に解熱薬を使用することで、生体防御反応をできるだけ妨げずに、熱によるつらい症状を緩和することができます。
つまり解熱薬を使用する主な目的は、体温を平熱まで下げることではなく、高くなった熱をお薬で一時的に抑えて、発熱に伴う不快な症状を軽減することにあると言えるため、発熱を予防する目的で解熱薬を使用することは勧められません。 - 予防的な使用が症状悪化につながることも「頭痛が始まりそうだから」と服用することもお勧めしません。鎮痛薬の不適切な連用によって痛みが誘発される「薬物乱用頭痛」が起こることもあります*7。
頭痛の場合には、痛みがひどくならない軽度のうちに服用することで、鎮痛効果を得られやすいことが知られています。「痛くなる前」ではなく、「痛みが軽いうち」に服用するのがよいでしょう。
一般名製薬会社薬価・規格
6.8円(300mg1錠)
添付文書基本情報
薬効分類
アセトアミノフェン製剤
アセトアミノフェン製剤
- カロナール
- アンヒバ アルピニー
- トラムセット
- SG配合顆粒
効能・効果
注意すべき副作用
ショック 、 アナフィラキシー 、 呼吸困難 、 全身潮紅 、 血管浮腫 、 蕁麻疹 、 中毒性表皮壊死融解症 、 Toxic Epidermal Necrolysis 、 TEN 、 皮膚粘膜眼症候群
用法・用量(主なもの)
副作用
主な副作用
チアノーゼ 、 血小板減少 、 血小板機能低下 、 出血時間延長 、 悪心 、 嘔吐 、 食欲不振 、 過敏症
重大な副作用
ショック 、 アナフィラキシー 、 呼吸困難 、 全身潮紅 、 血管浮腫 、 蕁麻疹 、 中毒性表皮壊死融解症 、 Toxic Epidermal Necrolysis 、 TEN 、 皮膚粘膜眼症候群 、 Stevens−Johnson症候群 、 急性汎発性発疹性膿疱症 、 喘息発作 、 劇症肝炎 、 肝機能障害 、 黄疸 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 γ−GTP上昇 、 顆粒球減少症 、 間質性肺炎 、 咳嗽 、 発熱 、 肺音異常 、 間質性腎炎 、 急性腎障害
注意事項
病気や症状に応じた注意事項
患者の属性に応じた注意事項
年齢や性別に応じた注意事項
相互作用
薬剤との相互作用
薬剤名影響アセトアミノフェン重篤な肝障害リチウム製剤他の非ステロイド性消炎鎮痛剤でリチウムの血中濃度が上昇しリチウム中毒炭酸リチウム他の非ステロイド性消炎鎮痛剤でリチウムの血中濃度が上昇しリチウム中毒チアジド系薬剤他の非ステロイド性消炎鎮痛剤でチアジド系利尿剤の作用を減弱ヒドロクロロチアジド他の非ステロイド性消炎鎮痛剤でチアジド系利尿剤の作用を減弱エタノール摂取肝不全クマリン系抗凝血剤作用を増強ワルファリンカリウム 作用を増強カルバマゼピン肝障害フェノバルビタール肝障害フェニトイン肝障害プリミドン肝障害リファンピシン類肝障害イソニアジド肝障害抗生物質過度の体温下降抗菌剤過度の体温下降
飲食物との相互作用
処方理由
鎮痛薬(経口)
この薬をファーストチョイスする理由(2022年9月更新)
・NSAIDsと比較すると、抗炎症作用がないのが欠点だと思うが、鎮痛作用や解熱作用は遜色なく、胃粘膜や腎臓に対する副作用は圧倒的に小さい。妊婦にもより安全に使える。内服薬、注射薬、坐薬がそろっていることも良い。鎮痛薬の第一選択薬。(70歳代病院勤務医、緩和ケア科)
・カロナールは体重に合わせて用量が変更可能であり、高齢者や小児でも処方可能なため新型コロナウイルス感染症患者の激増した現在の環境では非常に頻繁に処方している。カロナールだけで薬効をあまり実感できない方もいるので、ロキソプロフェンナトリウム水和物の頓服も併用で処方することもある。(20歳代診療所勤務医、一般内科)
・妊婦や小児でも使いやすく消化器への副反応も少ない。ただ、効果は比較的マイルドな印象があり、症例によってはNSAIDsへの切り替えや併用が必要なことがある。(50歳代病院勤務医、精神科)
・肝障害以外の著明な副作用がない。また、一般的に使用されている薬なので、それで疼痛がどの程度コントロールされるかで、痛みの評価を医療者間で共有しやすい。(30歳代病院勤務医、循環器内科)
・小児や妊婦でも使用でき、副作用も少ない。高用量を使用すれば、NSAIDsに劣らない鎮痛効果も期待できる。(30歳代病院勤務医、総合診療科)
鎮痛薬(経口)
この薬をファーストチョイスする理由(2021年1月更新)
・アセトアミノフェンは効果が弱いとの印象があるが、十分量を使用すればロキソプロフェンなどと遜色のない効果が得られる。短期間であれば大量投与でも副作用の経験はほとんどない。(60歳代診療所勤務医、一般内科)
・消化性潰瘍や腎機能障害等の副作用がなく最も安全性が高く、子供から高齢者、妊婦・授乳婦に至るまで使用できる。用量も昔は1回500mg3回までと少なかったので効かない印象が強かったですが、今は1回1000mgを4回まで使用でき、十分に効くので疼痛治療のまずは第一選択でしょう。自分自身や家族にもしょっちゅう使います。(40歳代開業医、皮膚科)
・鎮痛効果だけを見ればロキソプロフェンより劣りますが、副作用が少なく高齢者でも安全に使えるので重宝しています。たまに、ロキソプロフェンを毎食後処方されている方を見受けますが、消化管出血で救急搬送される事例を何度も経験しているので、他山の石として決して自分は行わないようにしています。(40歳代病院勤務医、一般内科)
・NSAIDsに比べると効果はマイルドだが、粘膜障害も少なく腎機能障害もあまり気にしなくてよいのが良い点。また、小児にはよっぽどの例外を除いてアセトアミノフェン一択で処方している。(30歳代診療所勤務医、耳鼻咽喉科)
・以前はNSAIDsを第一選択薬として用いていましたが、アセトアミノフェンの使用上限が変わり、またカロナールにも500mgのものが出たため、アセトアミノフェンをまず第一選択薬として使用しています。(50歳代病院勤務医、消化器外科)
鎮痛薬(経口)
この薬をファーストチョイスする理由(2019年5月更新)
・アセトアミノフェンは腎機能に関係なく処方でき、他の鎮痛薬に比べると胃粘膜傷害のリスクが低い印象がある。また抗血小板薬の作用への影響も少ない。しかし肝機能障害を起こしたり、基礎疾患であれば泣く泣くNSAIDs(ロキソニン ロキソプロフェン等)を頓服薬として処方する。(20歳代病院勤務医、救急科)
・アセトアミノフェンは、錠剤が大きめで一度にたくさん飲まなくてはいけないのもあり、どうしても推奨用量より少なめの投与になりがちです。そのためか、NSAIDsに比べてやや効果低い感じがありますが、安全性を考えてアセトアミノフェンを処方することが多いです。(50歳代病院勤務医、循環器内科)
・腎機能障害がある患者でも使える点がいい。特に術後患者で腎機能障害を引き起こした方や、もともと重度の腎機能障害の患者が多いので重宝している。(30歳代病院勤務医、心臓血管外科)
・アセトアミノフェンは、用量依存的に鎮痛効果を発揮するようですが、大量に使用しなければ肝障害も出現しにくく、用量調節しやすい印象です。(60歳代病院勤務医、一般内科)
・鎮痛作用はNSAIDsより弱い印象があるが、従来の使用量よりかなり多くしても副作用のリスクは低いと感じたため、今後積極的に使用する。(30歳代病院勤務医、腎臓内科)
・副作用が少なく、効果も量を増やせばある程度見込めると思います。高齢者が中心となり使いやすい薬剤を選択するようになっています。(40歳代病院勤務医、一般内科)
鎮痛薬(経口)
この薬をファーストチョイスする理由(2017年8月更新)
・効果はさほど強くないが、肝機能障害を除けば、大きな副作用がないので第一選択にしている。(60歳代病院勤務医、小児科)
・よく効きます。副作用も比較的少ないです。NSAIDsが使えない喘息患者でもアセトアミノフェンは使えることが多いです。(50歳代病院勤務医、呼吸器内科)
・昔はロキソニンでしたが……。(40歳代病院勤務医、耳鼻咽喉科)
・風邪などで受診した人に腎機能を比較的気にせず処方でき、また、インフルエンザを疑うとき、脳症を警戒してカロナールを処方することが多いです。効果は弱いように思うのですが、あまり患者さんから効果不足を言われることはありません。(40歳代病院勤務医、循環器内科)
・後期高齢者を診ることが多いので、アセトアミノフェンを頻用しています。鎮痛効果を考えると、ロキソプロフェンには到底及びませんが、副作用が生じにくい点が非常にありがたいです。また、内科以外の診療科から紹介された際、ロキソニンを毎食後で処方されている場合を散見します。消化管出血等が発生した場合の後始末はこちらなので、非常に苦々しく思いながら早々に切り替えています。(30歳代病院勤務医、一般内科)
・胃腸障害が少ない。授乳者にも投与できる。RAには投与していない。(60歳代診療所勤務医、一般内科)
・小児も多いのでアセトアミノフェンの処方頻度が多くなる。大人だけに限ればロキソニンになるかもしれない。(50歳代開業医、耳鼻咽喉科)
鎮痛薬(経口)
この薬をファーストチョイスする理由(2016年2月更新)
・腎機能障害、胃粘膜障害のリスクが極めて少ないことが長所です。ただ、肝機能障害患者に対しては増悪させる可能性があるので要注意です。(40歳代病院勤務医、麻酔科)
・老健で高齢者を対象としていますので、安価かつ安全なアセトアミノフェンが第一選択です。効果不十分な場合にロキソプロフェンを使います。(60歳代、総合診療科)
・かぜによる発熱には使いやすい。また、痛み止めにも500mg錠が出たのでこれから処方が増えそうです。(30歳代病院勤務医、一般外科)
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・作用は弱いですが、胃腸障害がないことが最も安心して使える理由です。安価なのもいいです。肝臓障害には留意する必要ありますが、短期間の使用ならまず気にすることはないようです。NSAIDではロキソニンを第一選択にしております。高齢者の腰痛などの関節痛にはまずカロナールで試して、増量しても効果がない方にはロキソニンを使用しています。逆にするとカロナールは効果が弱いからロキソニンを希望されます。するとロキソニン中毒にようになってしまって胃腸障害などで困るケースがありますので、最初にあまり強い薬を処方しないという意味でもカロナールは理想と思います。(50歳代診療所勤務医、総合診療科)
・鎮痛作用は弱いですが、小児領域では、アセトアミノフェンを第一選択にします。(50歳代診療所勤務医、小児科)
・腎臓内科なのでCKDの患者、とくにCKD stage3〜5の患者にはNSAIDsを使いにくく、痛み止めと言えばこれ一択になってしまう。(30歳代病院勤務医、内科系専門科)
・以前はボルタレンやセレコックスをよく使っていましたが、高齢者の患者が多く、腎機能低下をきたしたりすることもあり、用量増加可能なアセトアミノフェンを使うことが多くなりました。思ったよりも肝障害は少なく、効果もあります。(50歳代病院勤務医、呼吸器内科)
・小児に安全に使える解熱鎮痛薬はアセトアミノフェンなので。次はイブプロフェン。(50歳代病院勤務医、小児科)
・副作用も比較的少なく、投与量の上限も引き上げられた。がん性疼痛ではまず、ファーストラインの薬剤であるから。(40歳代病院勤務医、一般内科)
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添付文書
効果・効能(添付文書全文)
用法・用量(添付文書全文)
副作用(添付文書全文)
使用上の注意(添付文書全文)
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